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ロシア・ウクライナ系の装備を紹介します。

2023年01月19日

ロシアにおける薬物乱用その2

ロシアにおける薬物乱用その2

ロシアにおける麻薬、向精神薬に関わる犯罪

『議論と事実 』新聞(2003年No.33) 
https://aif.ru/gazeta/number/20536
ルビャンカの麻薬密売人
https://archive.aif.ru/archive/1629591

「麻薬などに関係する犯罪とは,麻薬や向精神薬,劇薬などを不法に保持・消費・輸送・製造・売買・譲渡することである。麻薬などに関係する犯罪(以下,麻薬犯罪)については,1991年のソ連崩壊までのロシアにおける人口10万人あたりの件数は,10前後で推移するが,崩壊直後の1992年から急増し始める(表3)。
麻薬犯罪の特徴の一つは,経済状況とあまり関係なく,むしろ国家体制が一旦弛緩してしまうと一気に増加することである。麻薬犯罪の認知件数はソ連崩壊後急増し,1991年に19321件(人口10万人あたり13.0件)であったのが,2000年に243572件(同167.3件)と約12.6倍になった。この年をピークにその後減少傾向に転じたが,その減少幅はわずかである(8)。当局によって押収された麻薬は,マリファナが最も多くて全体の54.8070である。ヘロイン,モルヒネ,アヘンの原料であるケシの実が37.8%(1998年)である(9)。

『論拠と事実』紙(2003年No.33)は,2003年8月上旬にモスクワ市郊外でヘロイン420kgが押収されたことや,麻薬の密売人の暗躍,麻薬の蔓延について報じている。同紙によると,当局による麻薬押収量は,1996年に44.5トン,1997年に515トン,1998年に47.3トン,1999年に70.8トン,2000年に62.6トン,2001年に82.5トン,2002年に117.2トンであり,とくに1999年からの急増が目立つ。もちろん,この数字は,当局による押収量であるから,氷山の一角に過ぎない。しかし,当局による押収量にしても,いかに多いかが日本と比べてみると分かる。日本での麻薬押収量は,ここ20年で最高量となった1999年で2893.7kgである。
その7割は覚醒剤であり,大麻も3割弱を占める。その他は,ヘロイン,LSD,アヘン,コカインである。比較するとロシアでの麻薬押収量(2002年)は実に日本の40倍を上回り,kgでなくt(トン)で表示しなければならないほどである(10)。一度の押収量についても前出のヘロイン420kgは,大変な量である。

日本における2002年における覚醒剤取締法違反による検挙人員は,16964人,その他麻薬等事犯検挙人員2255人(11),毒劇物法違反検挙人員5132人を合計しても24351人である。一方,同年ロシアにおける麻薬犯罪での認知犯罪者数は189576人であり,日本の7~8倍となっている。ロシアの人口が日本の116%ぐらいだということも考慮に入れても多い。その背後には,数倍の犯罪,犯罪者が存在していることがうかがえる。日本の麻薬などでの犯罪検挙人員合計24351人は,ロシアでは1991~92年の数字に相当する。それ以前のロシアでは,はるかにその種の犯罪も犯罪者も少なかった。ロシアにおける麻薬犯罪の急増は,ソ連崩壊による体制の緩みが明らかに引き金となっている。
さて,その麻薬は,どこからロシアに入ってくるのであろうか。それは,「ほぼすべてがロシアに,アフガニスタンやタジキスタンからウズベキスタン,カザフスタン,キルギス,トゥルクメニスタンを経て流入してくるヘロインの密輸である。ロシアを経て,ウクライナ,フィンランドヘヘロインが流れている」(12)と考えられる。輸送手段は,都市間の道路があまり整備されていないので,主に鉄道である(13)。ロシアでの押収麻薬にケシの実が多いことを考えると,ヘロインそのものだけでなく原料としてのケシの実が密輸され,例えばモスクワ市近郊などでヘロインなどが製造されるのではないかと思われる。また,麻薬犯罪は,外国人が関係していることが多い。そこで統計にも,1995年以降外国人による麻薬犯罪の項目が出現した。
それによると,最近は,麻薬犯罪の3~4010が外国人による犯罪で,その多くはСЮНГ(独立国家共同体)諸国民である。
この麻薬の流通について,「とくに影響のある要地は,モスクワ,サンクト・ペテルブルク,カリーニングラード,アストラノ・ン,クラスノダール地方,北カフカス,極東である」(14)という。統計によると麻薬犯罪の多発地域(2002年)は,多い順に,ユダヤ自治州(人口10万人あたり,288.5件),アストラノ・ン州(同240.5件),沿海地方(同233.9件),アムール州(同2155件),ノ・バロフスク地方(同212.6件),チュメニ州(同200.4件),ノボシビルスク州(同194.7件),チューバ共和国(同192.4件),トムスク州(同186.2件),コミ共和国(同181.7件),クラスノダール地方(同179.8件),カリーニングラード州(同175.0件),サンクト・ペテルブルク市(同169.2件)などである。
極東では,ノ・バロフスク市を中心にノ・バロフスク地方に隣接するユダヤ自治州,アムール州,沿海地方で麻薬犯罪が多発している。チュメニ州,ノボシビルスク州などシベリア鉄道沿線の州で麻薬犯罪が多いのは,カザフスタンからの入口あるいは流通拠点になっているからである。アストラハン州で麻薬犯罪が多いのは,そこが中央アジアからロシアへの麻薬の入口となっているからである。カリーニングラード州やサンクト・ペテルブルク市で麻薬犯罪が多いのは,北欧,西欧への麻薬の出口となっているからである。戦前,東プロイセンと呼ばれたカリーニングラード州は,ソ連崩壊でロシアの飛地となり本国の目が届きにくくなったこともあり,麻薬犯罪を初めとしていろいろな犯罪の温床となっている(15)。EUの2001年の報告書では,「カリーニングラードに膨大な密輸品や麻薬が流れていると指摘」(16)されている。サンクト・ペテルブルク市では,同市を含むレニングラード州(同109.3件)よりかなり麻薬犯罪が多い。同様に首都モスクワ市(同183.5件)もモスクワ州(同46.4件)よりかなり多い。2001年までは,モスクワ市よりサンクト・ペテルブルク市の方が,麻薬犯罪が多かったが,2002年に逆転した。サンクト・ペテルブルク市では1999年(同312.9件)をピークに減少傾向となるが,モスクワ市では一貫して増加している。

現在のロシアでは,経済の安定とともに一般に犯罪の増加が鈍化し,犯罪の種類によっては減少しているものもある。麻薬犯罪も統計の数字上は,増加に歯止めがかかったように見えるが,「モスクワ,サンクト・ペテルブルクやその他ロシア連邦の大都市の蔓延に関連して高集積された麻薬の地方大衆への拡散の全条件がそろった」(17)と,考えた方がよいであろう。」


ロシアにおける麻薬・向精神薬・劇薬に関連する犯罪

(8)2002年 の ロシ ア にお け る麻 薬 犯 罪 に関 す る認 知 件 数 は ,189576件,人 口10万 人 あた り125.0件 で あ
る。
(9)Гыскз,А.В., Собременная россu〓ская nресmynносmb u npoб〓емы безоnacносmu об〓есmба no〓u-
muческu〓 ана〓uз, Москва,Прогрессивные ьио-Медицинские Теxнологии,2000,стр.202.
(10)『犯 罪 白書 』(法 務 省 法 務 総 合 研 究 所 編)で は,g(グ ラ ム)表 示 で あ る。
(11)大 麻 取 締 法 ,麻 薬 取 締 法,あ へ ん法 違 反 に よ る検 挙 人 員 で あ る。
(12)Гыскз,А.В.,тамже,стр .205.
(13)тамже,стр.205.
)Тамже,стр .169.
(15)朝 日 新 聞 ,2001年1月31日(朝 刊)
(16)朝 日 新 聞
,2001年6月20日(朝 刊)
(17)Гыскз,А.В.,тамже,стр .201-202.

犯罪統計を通して見る現代ロシアの社会変動  ―ペレストロイカ期から2002年まで― 村井 淳 著 
(10)麻薬などに関係する犯罪 より引用
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarees2001/2003/32/2003_32_145/_article/-char/ja/



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Posted by stickman_sam at 21:13│Comments(0)雑記
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